ペットの備蓄は、何をどれだけそろえればいいのか
ペットの防災でいちばん多い質問が「フードは何日分いるのか」です。人の備蓄と違って、 ペット用品は支援物資として配られる保証がありません。避難所に届くのは、まず人の食料と水です。 ペットのフード、療法食、猫砂、ペットシーツは、家庭で用意した分がそのまま在庫のすべてになります。 だから、量を先に確定させることが備えの最初の一歩になります。
まず3日分、できれば7日分以上という考え方
防災の分野では、まず3日分、可能なら7日分以上という考え方が広く使われています。 3日というのは、道路や物流が動き出すまでの最初の山を越えるための線です。 ただしペット用品はその後も棚に戻るのが遅く、特定のフードや療法食は在庫が偏ります。 7日あると、店舗の再開や取り寄せを待つ余裕が生まれます。持病で薬を飲んでいる子や、 療法食を食べている子がいる家庭では、14日分を目標にする考え方もあります。 いきなり14日分をそろえようとすると量と費用で手が止まるので、まず3日分を完成させてから積み増してください。
フードの量は、体重から逆算できる
犬と猫のフード量は、体重から1日に必要なエネルギー量を出し、それをフードのカロリー密度で割り戻すと出せます。 このツールでは、安静時のエネルギー要求量を 70 × 体重(kg) の0.75乗 で求め、 そこに維持のための係数(猫1.2・犬1.6)を掛けて1日のエネルギー量にしています。 そのうえで、ドライフードの代表的なカロリー(猫用400kcal/100g、犬用360kcal/100g)で重さに戻します。 体重4kgの猫なら1日約59g、体重17kgの中型犬なら1日約260gという計算になります。 フードのカロリーは商品ごとにかなり違うので、袋の裏の表示を入力すると精度が上がります。 うさぎやハムスターなどの小動物は、牧草とペレットが中心で計算方法が違うため、 体重に対する割合(うさぎ7%、小動物8%)で概算しています。
水は、人の備蓄とは別に用意する
ここを勘違いすると、備蓄が一気に足りなくなります。人の備蓄は1人1日3Lという目安で計算されるのがふつうで、 そこにペットの分は入っていません。犬はおおよそ体重1kgあたり1日60mL、猫は50mLが目安として使われます。 さらに、食器をすすぐ、体を拭く、薬を飲ませるといった用途に3割ほど上乗せしておくと現実に足ります。 中型犬2頭を7日分そろえると、ペットの水だけで18Lを超えます。2Lのペットボトルで10本です。 これを人の分の水と同じ箱に入れると、どちらの残量も分からなくなります。ペットの水は別の箱にまとめてください。
断水したとき、水をどう確保するか
断水の対策は、ためる・もらう・使い分けるの3つです。ためるのは未開封のペットボトル水が基本です。 くみ置きの水道水も使えますが日持ちしません。一般に、直射日光を避けた常温で3日程度、 冷蔵で7日程度が目安とされています。清潔な容器に口いっぱいまで入れて、くんだ日を書いておいてください。 もらうのは給水所です。集合住宅でエレベーターが止まると、水は階段で運ぶことになります。 大人1人が階段で無理なく運べるのは8kg前後、つまり8L前後です。1日に必要な量から往復回数を先に数えておくと、 給水袋やキャリーカートを用意すべきかどうかが判断できます。 使い分けは、浴槽にためた水を生活用水(トイレ・掃除)に回し、飲用にはペットボトル水だけを使うという線引きです。 浴槽の水はペットの飲用には向きません。
合計の重さを出して、持ち出す分と家に置く分に分ける
備蓄をそろえると、次に必ずぶつかるのが「全部は持ち出せない」という壁です。 猫3匹と小型犬1頭の家庭なら、キャリーに入れた状態だけで24kgを超えます。 大人1人が抱えられる限界を、ペットだけで使い切ってしまう計算です。 この時点で、14日分の備蓄33kgを一緒に持ち出すことは物理的にできません。 だからこの計算機は、備蓄を「すぐ持ち出す分(最大3日)」と「家に置く在宅避難用」に分けて出します。 運びきれないと出たときに削るべきなのは日数ではありません。運ぶ人を増やす、キャリーカートを1台用意する、 水だけ取りに戻れる置き方にする。この3つのどれかを、平常時に決めておくことのほうが効きます。 中型犬・大型犬は自力で歩く前提で計算していますが、ケガや強い恐怖で歩けなくなることがあります。 抱えられる重さかどうかを一度試しておくと、当日の判断が速くなります。
ローリングストックで、期限切れを防ぐ
買って置くだけの備蓄は必ず切れます。フードは開封しなくても劣化しますし、 保存水にも賞味期限があります。ローリングストックは、備蓄を普段の生活で少しずつ消費して、 消費した分を買い足す方法です。周期を決めるのがコツです。 ドライフードなら30日ごとに、いちばん古い1袋を普段の食事に開けて、同じ日に1袋買い足す。 備蓄が3袋なら90日で全部が入れ替わります。保存水は90日ごとに古い順から数本を普段使いに回し、 同数を買い足すと、8回およそ2年で全数が入れ替わる計算になります。 猫砂とペットシーツは期限がありませんが湿気を吸うので、180日ごとに開封済みの袋を点検してください。 処方薬と療法食は、受診のたびに残数を書き換えるのがいちばん確実です。 周期はカレンダーの繰り返し予定に入れてしまってください。覚えておこうとすると続きません。
この計算機がしないこと
このツールは目安の数量を出すだけで、獣医療の判断は一切しません。 給餌量は年齢・活動量・体調・避妊去勢の有無で変わりますし、 腎臓病や心臓病があると飲水量の考え方そのものが変わります。 実際の量はフードのパッケージ表示と、かかりつけの獣医師の指示に従ってください。 処方薬を何日分手元に置けるかも獣医師の判断が必要です。買い置きはできません。 次の受診のときに「災害に備えて何日分まで処方してもらえるか」を相談し、その答えを記録しておいてください。